Ⅰ 東北アジア研究センターの「共同研究」
日本海を挟んで、ユーラシア大陸の東北方面(ロシア、中国、モンゴル、コリア)とそれを観察する本拠地たる日本も含めた広大な地域を研究対象とする本センターでは、文理融合組織としての利点を活用しつつ、広く学内外の研究者の方々との連携を図るべく、様々な観点から共同研究を実施しています。世界には様々な地域研究が存在しますが、それらの地域と共通した課題の他に、東北アジア地域という地政学的な環境から導き出される独特の研究課題が考えられます。30年近い歴史を有する当センターは歴史的に様々な問題に取り組んできましたが、それらも踏まえて現在想定しているのは次のような問題群で、それらを次の(A)~(E)のようなグループにまとめています。
(A) 環境問題と自然災害
地球温暖化、それに伴うと思われる世界的な環境の変化(生物・植物の環境適応による漁業・農業等、一次産業への影響)や自然災害(頻発する洪水、山火事、巨大化する台風、海面の上昇、火山活動、地震)、人間活動に伴う環境問題(公害、大気汚染、原発事故後の処理水の海洋放出)は東北アジア地域でも広範囲で深刻な影響を及ぼしている。東北アジア地域における気象観測、大気、環境観測や、被災者に対する支援も考察する。
(B) 資源・エネルギーと国際関係
人類の生活にとって不可欠な発電(原子力、水力、火力=石炭、石油、天然ガス、太陽光、風力、水素)、レアメタルや工業発展に不可欠な様々な資源開発について東北アジア地域における諸問題を考察する。
(C) 移民・物流・文化交流の動態
東北アジア地域における人の移動(移住、少子高齢化地域への派遣労働、抑圧的政権からの亡命)、物の移動(貿易、密輸)、人や物を運ぶ交通(飛行機、船舶、鉄道、自動車)、人の交流(観光、留学、学術的共同研究)の実態、相互関係、その歴史的変化について考察する。
(D) 自然・文化遺産の保全と継承
東北アジア地域の環境(大気、陸地、海洋、河川、動植物の種の多様性)、その歴史的変遷(戦史時代研究、人類学、考古学)について考察する。
(E) 紛争と共生をめぐる歴史と政治
東北アジア地域に存在する諸国家の形成・発展・人口構成・特徴・少子高齢化問題、宗教・言語・民族・紛争や戦争・イデオロギー、安全保障・法や秩序に関する問題、国家間の相互関係、それらの歴史的発展、民主主義的発展
もちろんここに含まれていない課題についても研究者の独自の発想によって研究を進めることは可能ですが、毎年度始めに各研究者は(A)~(E)のどのテーマを主題にするのか選んで共同研究に関する計画書を提出することになっています(現在、申請者はセンター所属教員に限定されています)。地域内の複数の国々にまたがる課題、あるいは既存の学問分野の枠組みを越えた学際型ないし文理横断型の研究がとくに奨励されています。
センターの運営会議で承認されれば1年間、或いは複数年の共同研究が実施されることになりますが、各研究者が代表を務めうる研究は2件で、各共同研究には例年30万円程度の研究資金が提供されています。代表者は毎年度末に、年間の共同研究の成果を報告することが義務づけられ、センターでは翌年度の6月頃には外部モニターの先生方もお招きして、学内外に開かれた成果発表会を開催しています。
Ⅱ 東北アジア研究センターの「プロジェクト研究」
共同研究よりも規模が大きく、比較的長期の研究期間で行われるのが「プロジェクト研究」で、そのための特別のユニットが形成されます。このプロジェクト・ユニットでは学術研究員を雇用することが認められ、その研究員には研究個室も与えられています。プロジェクト・ユニットは外部資金を獲得することが求められているため、センターの内部資金の付与は想定されていません。現在稼働しているプロジェクト・ユニットは以下の通りです。
代表:高倉 浩樹 教授 | マイノリティの権利とメディア研究連携ユニット |
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代表:石井 敦 准教授 | 「国連海洋科学の10年」対応ユニット:超学際科学を用いた漁業政策評価 |
代表:平野 直人 教授 | 地質研究資料アーカイブと試料キュレーティング |