東北大学 東北アジア研究センター

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韓国の陸産貝類の種多様性・独自性に関する研究

研究題目

韓国の陸産貝類の種多様性・独自性に関する研究

研究領域

(D) 自然・文化遺産の保全と継承

研究内容

 現在は、生物種の第 6 次大量絶滅時代に突入していると言われ、その絶滅スピードも非常に急速だと推定されている。そして人新世という新たな時代区分が提起されるほど人類が地球環境に及ぼす影響は甚大なものであり、人間活動こそが 6 度目の大量絶滅の最大の要因だと見なされている。
 カタツムリ・ナメクジを含む土壌性の貝類は、温度上昇・乾燥化・生息範囲の分断化などの環境変化に脆弱な生物群の一つであり、驚くべきことに、近年に絶滅した全動物種の内の約 40%が土壌性貝類だと推定されている。また、現存する種についても、IUCN・国・地方自治体が作成するレッドリストには多くの土壌性貝類が指定されており、絶滅の危機に瀕している。しかし、現在の土壌性貝類のレッドリストは精度が高いとは言えない。絶滅リスクを正しく評価するために必須である、他種との差異に関する分類学的知見や分布範囲に関する生物地理学的知見が著しく不足しているため、多くの種がリストから漏れていると考えられる。
 本研究では、日本と韓国での土壌性貝類の分類学的・生物地理学的知見の蓄積を目標とする。韓国での土壌性貝類の分類は日本での知見を基礎としたため、日本にいる種と同種であるとされることが多かった。しかし、移動分散能力の低い土壌性貝類にとって海峡は分布制限の大きな要因となり得るものであり、共通とされる種すべてが本当に同種である可能性は低いと考えられる。そこで、DNA 解析を用い日韓の「共通種」の妥当性を評価し、日本・韓国の陸産貝類の種多様性・独自性の一端を解明することを目指す。誤って共通種と認識される、つまり分布が広範囲にわたると認識されることは、絶滅リスクを過小評価されるということであり大きな問題と言える。従って、本研究により得られる結果からは保全手法を適切に設定するための基礎的情報が得られることが期待できる。

研究期間

2025年度~2025年度

研究組織

氏名所属
木村 一貴東北アジア研究センター
Yongsu Kim韓国国立植物園生物資源研究部