研究題目
東北アジアにおける経済回廊構想と周縁住民:辺境貿易に注目した人類学的研究
研究領域
(C) 移民・物流・文化交流の動態
研究内容
本研究の目的は、ロシアと中国という二大国の狭間に位置するユーラシアの国境地帯において、国家主導の経済回廊(例:一帯一路、ユーラシア経済同盟、中蒙露経済回廊構想=CMREC)が地域社会に与える影響を、周縁に暮らす人々の視点から捉え直すことである。これらの経済構想は、インフラ整備や貿易促進を通じて国家間の統合を目指すものであるが、その影響は一様ではなく、むしろ国境地帯においては、民族的マイノリティや周縁的コミュニティによる独自の受容・実践・再解釈が行われている。本研究では、中蒙露国境地帯における経済回廊構想(CMREC)を、同地域で歴史的に展開してきた越境的民族的実践と経済活動から再考することを試みる。中国国内やロシア国内に居住するモンゴル系諸民族集団は、国家の境界を越えた親族関係や交易ネットワークを活用しながら、フォーマルな制度とインフォーマルな実践の間を巧みに行き来している。彼らの経済活動は、単なる生計手段にとどまらず、文化的アイデンティティの表現、社会的地位の構築、さらには国家との交渉の場ともなっている。本研究は、こうした生活者レベルでの越境実践を通じて、CMREC がもたらす社会的・文化的変容を明らかにし、国家主導の統合構想とは異なる、ミクロな回路から同時代の回廊構想を捉え直すことを目指す。
本共同研究では、CMREC のなかでも基幹となっている中国内モンゴル自治区シリンホト盟のエレンホト(二連浩得)特別市とモンゴル国ウランバートル、そしてロシア連邦ブリヤート共和国のウランウデを結ぶ、モンゴル縦貫鉄道とアジアハイウェイ4号線(AH4)からなる中央回廊に特に注目した調査研究を行う。ハード面・ソフト面双方からこのルートがいかに建設・構成・利用されてきたのかを確認するとともに、CNREC や同時代の政治・経済情勢のなかで、人やモノの動きから成るこの回廊がどのように変容しているのかを分析する。
研究期間
2025年度~2026年度
研究組織
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 寺尾 萌 | 東北アジア研究センター |
| 包 双月 | 大学院文学研究科 |
| Natsagdorj Battsengel | モンゴル科学アカデミー歴史研究所 |