東北大学 東北アジア研究センター

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災害時における障害者の脆弱性の研究

研究題目

災害時における障害者の脆弱性の研究

研究領域

(A) 環境問題と自然災害

研究内容

 災害は誰にとっても致命的となりうるが、マイノリティグループの一つである障害者には特に大きい影響がある。2015年UNSDGは国連総会で「誰一人取り残さない」というスローガンを掲げ、それに基づいて多くの国で社会の不平等と脆弱性を減らす努力がなされている。しかし依然として災害リスクに十分な準備がない障害者を含めた脆弱グループは大災害時になるととり残される可能性が高い。災害に対する社会レジリエンスを向上するためには、先進国でも開発途上国でも障害者を含む災害リスク減少が必須であり、そのための戦略は喫緊の課題である。
 その中で、認知障害がある人たち、特にダウン症の人たちは身体的・認知的に社会的規範から相対的に逸脱しているため、障害者やその他のマイノリティの人たちが抱える典型的問題(身体的避難、情報へのアクセス、防災教育、依存、偏見など)に直面しやすい。すなわち認知障害者は災害中において他者による支援が必要な可能性が高く、災害後も集中的な支援が必要な可能性がある。
 日本、インドネシアを含めて世界中に災害リスク減少政策に認知障害者を含む動きが少しずつ生まれている。認知障害者を含む災害リスク減少政策を構築することには障害の種類、性別、年齢、可能な支援者(家族、友達、介護者、隣近所など)、社会性、個人能力、障害者をめぐる当該社会の文化を考慮することが必要である。それをふまえることで災害リスク減少の努力の際にも災害の際にも不均衡な影響を避け、「誰一人取り残さない」レジリエントな社会を作ることができる。
 多数の大災害を経験した日本は、災害リスク減少に政策的、経済的、技術的な投資をして災害リスク管理の先進国になった。しかし障害者を対象とした政策は、既存の災害対応計画を適用することに限定されている。本研究は、人類学と災害リスク管理・医療系の背景をもっている研究者により、日本とインドネシアでの災害リスク減少について認知障害者、特にダウン症の人たちとその家族、支援者からの詳しいニーズを把握して、認知障害者たちの災害リスク減少活動への参加機会を増やすことから、さらに進んで効果的な災害リスク管理によって災害にレジリエントな社会づくりに貢献することを目指す。

研究期間

2023年度~2027年度

研究組織

氏名所属
ボレー・セバスチャン災害科学国際研究所
木村 敏明文学研究科
パクへジョン災害科学国際研究所