研究題目
ポスト・ソ連ウズベキスタンの写真記録のデジタルアーカイブ化
研究領域
(D) 自然・文化遺産の保全と継承
研究内容
本研究は、ソ連解体直後の1992年より旧ソ連圏中央アジア、特にウズベキスタンを継続的に訪問してきた歴史研究者の堀川徹・京都外国語大学名誉教授が撮影したウズベキスタン各地の写真を、画像データベース化し、地域研究デジタルアーカイブで公開し、かつ保存する作業である。ソ連解体後の旧ソ連圏の状況は人類学、社会学で専門的に観察・記録されており、ウズベキスタンについても、村落地域の共同体や家族、生業のあり方などの研究蓄積がある(菊田 2013;今堀恵美の研究など)。都市部を含めた全体状況には、非専門家にも理解しやすいスタイルで解説するダダバエフの仕事などがある(ダダバエフ 2008)。こうした研究とあわせて、現地を継続的に訪問する研究者には、ここ10~15年で景観が相当に変わったという感覚が共有されている。つまり、ポスト・ソ連期の景観は失われつつあり、それは主に経済状況と結びついた現象だが、歴史研究者が観察する史跡にも相当な変化が及んでいる。特に史跡の変化は、ウズベキスタン政府の観光立国をめざす政策とも無関係でない(宮崎・エルドルジョン 2020)。
ポスト・ソ連期の景観は、研究者個人が撮影する写真に記録されてきたが、それらの多くは現状、当該研究者個人による利用の域を出ていない。ポスト・ソ連期の終わりが意識され、上述のような変化が認識される以上、そうした写真記録を公開し、同時にアーカイヴ化して保存する必要がある。本研究は歴史研究者の堀川徹によって撮影された写真を地域研究デジタルアーカイブで公開する作業を行う。これは現代研究のみならず、ソ連期に関心が集まる近年の歴史研究にも貢献するはずである。特に、ソ連期やポスト・ソ連期の状況を推測する材料を持ちづらい若手研究者に参照されるだろう。また、長期にわたる研究作業で得られたものを広く一般に公開するという点でも意義が認められるはずである。
・菊田悠『ウズベキスタンの聖者崇敬』(風響社、2013年)。
・ティムール・ダダバエフ『社会主義後のウズベキスタン』(アジア経済研究所、2008年)。
・宮崎千穂、エルムロドフ・エルドルジョン「ウズベキスタン共和国における「観光」の国家的意義の変容」、『日本国際観光学会論文集』27(2020年)、53~61頁。
研究期間
2024年度~2025年度
研究組織
氏名 | 所属 |
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磯貝 真澄 | 千葉大学大学院人文科学研究院/東北大学東北アジア研究センター |
堀川 徹 | 京都外国語大学 |
田村 光平 | 東北アジア研究センター |