拠点毎の研究テーマ
テーマ1:少子高齢化と葛藤(神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート拠点)
東ユーラシアにおける少子高齢化の進行とそれに起因する社会的紛争に焦点を当てる。近代以降の東ユーラシアでは近代の人口増加が移民の主なプッシュ要因であり、これを背景に植民地支配・ナショナリズムに係わる民族的紛争が起こった。ところが今日、少子高齢化による人口減少は移民・移住労働のプル要因となり、域内外の多文化化を促進するとともに、歴史的背景を引きずったまま、新たな葛藤の原因になりつつある。東ユーラシアに見られる人口減少・高齢化と多文化共存の特徴を解明する。
テーマ2:宗教とサブカルチャー(国立民族学博物館東ユーラシア地域研究拠点)
宗教やサブカルチャーが政治経済秩序とは異なる局面でグローバルな関係性の中でどのようにして人々の希望を作り出している点に焦点を当てる。とりわけ旧社会主義圏においては、圏外に拠点を置く制度宗教や旧西側由来のニューエイジ思想、サブカルチャーといった「グローバルな文化」との接続が90年代以降であったという点が特徴的である。中国においても改革開放以降に外来の宗教や文化と接続した点で共通している。こうしたポスト社会主義圏を中心とした東ユーラシアにおけるグローバル化のタイムラグを背景に当該地域の人々が、新たに生み出された文化によっていかなる幸福感と文化衝突が生じているのかを明らかにする。また比較のために中国・旧ソ連圏以外の東南アジアの事例も入れるものとする。
テーマ3:マイノリティの権利とメディア(東北大学東北アジア研究センター拠点)
ロシア・中国・日本などの先住民や民族的マイノリティの権利をめぐる動態に焦点を当てる。彼らが伝統的に暮らす地域は気候変動や経済開発等によって影響を受けているが、一方で先住民は国連など国際機関の政策決定にも影響を及ぼす存在であり、先住民族や少数民族同士が国家を越えて連帯している。こうした動向のなかで果たす映像をふくめた様々なメディアの役割を明らかにすることで、大国の主流派から排除されたマイノリティが作り出すグローバリズムを明らかにする。
テーマ4:越境とジェンダー(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター拠点)
ボーダースタディーズにおける境界付け([b]ordering)と空間に関わるスケールジャンプなどの手法を援用し、観光や就労、人身売買等を含めた域内外への人々の移動に焦点を当てる。移民の受け入れと送り出しは世界各地で生じている現象だが、一帯一路構想のもとで、アフリカや北極域までの移動・移民する中国と、ロシアに流入する移民展開を追うと同時に、性差による分業やジェンダー規範のグローバル化等の視点を踏まえて、その場に暮らす人々の生活の視座からそれぞれの地域(コミュニティ)のあり方を解明する。またコロナ禍(ポストコロナ禍)における人とモノの移動を検証し、地域のあり方も展望する。