2022.09.26

モンゴル国での現地調査レポート(寺尾)

2022年8月から9月にかけて、モンゴル国西部のオブス県および首都ウランバートルにて、牧畜地域における日用品(主に衣服)および畜産物(主に繊維品)の卸売業とメディア利用の連関に関する予備的調査を実施しました。

執筆者:寺尾 萌(鹿児島大学)

スマートフォンの普及とLTE通信提供エリアの拡大が進んだ今日のモンゴルでは、行政やビジネスで必要とされる通達や情報の収集・交換の大部分において、FacebookやWeChatといったソーシャル・メディアが活用されています。今回の調査でも、調査地であるオブス県A郡において、以前から利用されていた集落中心部の掲示板が廃止され、その代わりに、さまざまな情報が掲示されるFacebookがコミュニティ新聞のような役割を果たしていることが確認できました。

受信しやすい屋外でスマートフォンを掲げ、Facebook上の情報をみる牧民

(写真1:受信しやすい屋外でスマートフォンを掲げ、Facebook上の情報をみる牧民)

このような背景もあり、日用品の卸売業を営む複数の個人事業主に対して行った聞き取り調査では、国内外からの仕入れに際して、Facebook上の取引のためのグループが頻繁に用いられていることが分かりました。ソーシャル・メディア上での取引は、パンデミック下において自家で製作したハンドクラフト製品の販売等にも用いられ、個人事業主の多角的な事業展開に役立っていました。他方で、畜産物の卸売業を営む個人事業主に対して行った聞き取り調査では、かれらがほとんどソーシャル・メディアなどのメディアを用いずに取引を行っていることも分かりました。

上記畜産物商の調査中には、中国における獣皮の市場の縮小によって、とくに獣毛の少ない夏季には獣皮の取引価格が大きく下落し、廃棄せざるを得ない状況がある一方で、近年トルコからの獣皮の買付が急増していることも分かりました。また、国内での獣毛・皮革製品の生産も小規模ながら展開していることが分かりました。しかし全体としては、カシミア製品とそれ以外の獣毛・皮革製品では市場の規模に差があるため、国内外から向けられる関心や取引量にも大きな差があるといえます。今後は、広告等を含むメディア展開の差異にも注目しながら獣毛・獣皮の生産や売買の流れを調査し、国内外の市場の動向と牧民の生活の連関およびその課題を明らかにしていきたいと考えています。

オブス県の畜産物取引所にて、値がつかないため廃棄されているヒツジの毛皮

(写真2:オブス県の畜産物取引所にて、値がつかないため廃棄されているヒツジの毛皮)