氷融洪水とその社会対応から見る極北圏地域社会の比較研究
本研究は、シベリアと北米の極北圏において共通して発生する春の氷融洪水に地域社会がいかなる対応をしているか、人類学・土木工学・リモートセンシングの手法を用いて明らかにすることを通して、極北圏の巨大河川の存在を前提にした人間社会の特徴を明らかにすることを目的とするものである。
シベリアを特徴付けるのはツンドラ、タイガという生態系だけでなく、北極海にそぞく巨大な河川とこれに関わる無数の支流が形成されていることである。極北圏の人間社会の特徴は、この大小様々な河川の動態を調整することで成り立っている側面がある。特に重要なのは川幅数キロに渡るような大河川が冬期に凍結し、春には解凍するが、上流が南、下流が北という特質故に、氷融そして雪解けを原因とした洪水(氾濫)が春期に恒常的に発生していることである。シベリアの都市・農村いずれの場合であっても、そうした河川の生態系を前提に形成されている。
本研究では、この氷融洪水への社会的対応を、ローカル社会の在来的知識や民俗伝承という観点、さらに道路や水道などの近代的社会インフラ技術という観点から接近することで明らかにする。さらにリモートセンシングの手法を用いることでその洪水の空間的理解を深めるという方法をとる。
このことを通して、氷融洪水を前提としたシベリア地域社会にみられる生態的特質と社会技術との関係を明らかにすることが第一の目標である。さらに、シベリア地域社会の理解を深めるために、本研究では類似した生態条件にある北米極北圏も比較の対象にいれる。そのことで国家体制や民族集団といった相違を踏まえ、極北圏の巨大河川という生態系のなかで形成された人類社会の特徴の解明を行うのが第二の目標である。なお、本共同研究は、プロジェクト部門「シベリアにおける人類生態と社会技術の相互作用ユニット」の研究事業として実施される。
2010年度〜2013年度
氏名 | 所属 |
高倉 浩樹 | 東北アジア研究センター |
奥村 誠 | 東北大学災害科学国際研究所(兼務教員) |
渡邉 学 | JAXA |
久保田 亮 | 大分大学経済学部 |
山口 未花子 | 北九州市立大学 |
吉川 泰弘 | 北見工業大学 |
論文集の刊行
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