研究題目
旧石器時代の東北アジアにおける環境への文化的適応
研究内容
本研究は、旧石器時代の東北アジアにおける環境への文化的適応の実態を把握するため、そのケース・スタディーとして後期旧石器時代後半期の韓半島と九州における細石刃石器群の分析を行う。
対象資料となる細石刃石器群は、最終氷期MIS2の時期に東北アジアの広範な地域に分布し、最寒冷期となる25000年前には古サハリン・北海道半島や韓半島で出現し、九州においても19000年前頃には出現した。このうち、韓半島と九州は細石刃石器群が出土した遺跡の分布密度が極めて高く、両地域間の文化交流や文化的適応の動態を調査する格好のフィールドである。
細石刃石器群の日本列島への伝播については、動物資源の南下に伴うシベリアからの人の拡散、九州では韓半島からの人の拡散の結果と考えられている。しかしながら、細石刃核型式に基づいた系統や伝播経路の復元に終止する研究が多いため、両地域における人類の環境への文化的適応の実態はほとんどわかっていない。
一方、近年の研究成果から、九州内の細石刃石器群は、細石刃の使用痕レベルでの地域差が認められ、南部九州と北部九州において細石刃の機能や作業対象物が異なっていたことが示された。これは、両地域集団の行動パターンの違いを反映している可能性がある。
本研究は、韓半島と九州で出土している細石刃の使用痕分析を行い、両地域における細石刃の機能、使用パターンの違いや共通性について調査する。これにより、両地域の細石刃石器群狩猟採集民が、どのように気候、植生、動物相、地形に適応していたのかを議論するための考古学的基礎データを構築する。
研究期間
2020年度~2021年度
研究組織
氏名 | 所属 |
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佐野 勝宏 | 東北アジア研究センター |
寒川 朋枝 | 東北アジア研究センター |
戸塚 瞬翼 | 東北大学大学院文学研究科 |