東北大学 東北アジア研究センター

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蔵王山・御釜火口の活動調査

研究題目

蔵王山・御釜火口の活動調査

研究内容

我々は蔵王山が2011年東北地方太平洋沖地震により活発化する可能性を考え,2012年から丸山沢噴気地熱地帯及び山頂火口の御釜で採水や温度測定の調査を行ってきた.その一環として2017年度から3年間,研究課題「蔵王火山の活動の熱的・地球化学的モニタリング」を共同研究として実施し,御釜での湖底温度連続観測など,調査項目を拡充してきた.この間,地震や火山性微動の発生といった明瞭な活発化が見られ,我々の調査でも二度の火口周辺警報に対応するように,丸山沢噴気地帯での噴気温度上昇,小規模土砂噴出の発生,旧新関温泉での湧出再開などが確認された.2019年以降は地震や微動活動は低調で,噴気温度も低下傾向にあり,一連の活発化は収束したようにも見える.

一方で,現在は火山活動がないとされ,我々の調査でもこれまで活動の証拠が得られていない御釜では,ここ数年,新しい事実が見つかり,活動がないというこれまでの見解が疑わしくなってきた.2018年9月にはソナーを用いた探査で,平坦な湖底のほぼ中心部に丘状の地形が発見され,そこから上方に伸びる小物体群を示す反射が報告されている.また2019年6月には御釜の部分的白濁が2014年10月以来,再び観察されている.そもそも,pH3台の高い酸性度が御釜最後の活動から80年近く経った今も保たれているのは,火山性流体の供給が続いていることを示唆する.我々は御釜の活動実態を明らかにするため,2019年から御釜の水・熱・化学物質収支測定を準備してきたが,観測機材の設置許可取得などに時間を要し,これまでのところ,予備的な採水調査と,気象観測を2週間実施するに留まっている.水・熱・化学物質収支測定には年単位の観測が望ましく,これを実施するための共同研究を申請する.また,御釜活動の直接的な証拠を探るため,御釜湖底の様子を水中ドローンにて調査する.これらのことは御釜だけでなく,蔵王山全体の火山活動評価や,防災の面から極めて重要である.

研究期間

2020年度~2022年度

研究組織

氏名所属
後藤 章夫東北アジア研究センター
知北 和久北海道大学北極域研究センター
土屋 範芳東北大学大学院環境科学研究科
平野 伸夫東北大学大学院環境科学研究科
山崎 新太郎京都大学防災研究所
松中 哲也金沢大学環日本海域環境研究センター
岡田 純気象研究所仙台分室