研究題目
更新世末から完新世初頭の中国東北地方における環境変動と人類行動
研究内容
本研究の対象地域は黒竜江省のウスリー川流域の遺跡群である。中でも主たる分析対象となる小南山遺跡は、約10,000~9,000BPの年代であり、旧石器時代から新石器時代への移行を考える上で極めて重要な遺跡である。遺物の組成は両時代を特徴付けるものが混在し、さらに墓坑から多数の玉器が出土している。一方、有機質遺物の出土はなく、その生業活動を具体的に明らかにするのが難しい。そこで、本研究では、道具の製作技術のみならず、その機能を解明することで、道具の使用対象物を推定し、その生業活動を明らかにしたい。具体的には高倍率法による石器の機能研究と土器付着物の安定同位体分析などを駆使し、生業の実態に迫る。また、剥片石器の石材には白頭山や在地産の黒曜石などが利用され、玉器も広域に流通する道具であるため、人々の移動や交流、物資の流通を検討できる材料となっている。こうした石材の内容を正確に把握することで、急激な環境変動と時代の移行に伴う文化交流の変容を理解できる。
さらに、本研究で得た基礎データを、ウスリー川・アムール川を挟んで対岸のロシアにおける研究成果と総合し、当地域の旧・新石器時代移行期における文化動態を考察したい。ロシア側のアムール川流域は旧・新石器時代移行研究の中心地であり、多くの研究が蓄積されている。申請者ら(鹿又・青木)は、既にロシア側の資料の分析を開始している。また、申請者の一人(王)は、中国東北地方の研究において、数年間におよぶ発掘調査への参加や資料分析の実績がある。こうした一連の研究に、情報の少ない中国東北地方の新たな研究成果を加えることで、当地域の新石器化を検討するための新知見を得ることが最終的な目的である。
研究期間
2019年度~2021年度
研究組織
氏名 | 所属 |
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鹿又 喜隆 | 東北大学大学院文学研究科/東北アジア研究センター兼務教員 |
王 晗 | 東北大学大学院文学研究科 |
青木 要祐 | 東北大学大学院文学研究科 |