東北大学 東北アジア研究センター

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山形県天童市における自治体史編纂後の歴史資料保存の実践

研究題目

山形県天童市における自治体史編纂後の歴史資料保存の実践

研究領域

(D) 自然・文化遺産の保全と継承

研究内容

 1970から80年代、古文書などの歴史資料を悉皆的に調査し、地域の歴史を叙述する自治体史編纂が全国各地で盛んに行われた。それから50年近くの時が経ち、かつて調査の過程で把握された資料の廃棄・散逸が危惧されている。追跡調査した事例によると、三重県では17.2%、大分県では23%など、2割前後の資料が所在不明となっていることが報告されている。山形県天童市においては、1970年度から天童市史編纂が企画され、刊行後、市史編纂に活用した資料のほとんどは旧家に返却されたが、その後の追跡調査は行われていない。そこで申請者は2022年度より、天童市教育委員会・天童郷土研究会の協力のもと調査を開始したところ、今後の保存に困難な実情が確認された。
 1そこで本研究では、天童市を事例に自治体史編纂後の歴史資料の保存活動に取り組み、資料消滅・存続の傾向を検証しながら将来的な消滅に備えた対策を試みる。具体的には、3つの活動を実施する。第一は、天童市史で活用された資料群の追跡調査の継続である。調査対象資料群は『天童市史編集資料』などから80件ほどリストアップを終えており、情報を精査したうえで郵送や個別訪問を通して現状を確認する。その際、家の建替えや資料を有効活用できないなどの理由から市への寄贈・寄託を希望する旧家が出てくることが予想される。そこで第二として、中性紙封筒への封入や目録作成などの資料整理を実施し、持続的な保存環境を整備することで継続した資料保存を要望、あるいは市の受け入れ作業を補助する。第三としては、今後の資料保存の理解を深めるべく地域史研究を推進し、資料所蔵者や市民に向けてその成果を公開することで資料保存の意義を共有する。
 1以上の活動によって、天童市における歴史資料の消滅を未然に防ぐとともに、資料の所在を把握することで今後の研究や災害時の文化財確認調査などに寄与する。また、資料消滅・存続の傾向など資料保存をめぐる課題とそれへの対策を提示することで、今後の資料保存活動の発展にも寄与する。

研究期間

2024年度~2026年度

研究組織

氏名所属
竹原 万雄東北アジア研究センター
野口 一雄天童郷土研究会
村山 正市天童郷土研究会
天野 真志国立歴史民俗博物館
高橋 直大一橋大学大学院
小関 美紗