東北大学 東北アジア研究センター

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ローソン石エクロジャイトの年代学:低地温勾配下で変成したスラブの年齢決定

研究題目

ローソン石エクロジャイトの年代学:低地温勾配下で変成したスラブの年齢決定

研究領域

(B) 資源・エネルギーと国際関係

研究内容

 日本列島周辺に代表される海洋プレートの沈み込み帯では、水を保持した海洋プレートの脱水反応が引き金となって、地震活動や火山活動が誘発される。沈み込み帯深部において「含水量の高い(約11.5重量%)ローソン石を含む変成海洋地殻(ローソン石エクロジャイト)」の形成は、沈み込み帯における水や微量元素の循環および地球深部への物質輸送において重要な役割を果たすと考えられている。一方で、世界の造山帯においてローソン石エクロジャイトの存在は極めて稀であり、沈み込む海洋地殻の実像やローソン石エクロジャイトの普遍性については多くの議論がなされてきた。2000年代以降、典型的な海洋プレートの沈み込みにおいて、海洋地殻構成岩が十分に低い地温勾配を達成するためには、地殻熱流量の小さい古いスラブの沈み込みが必要だと考えられてきた。最近、Hernández-Uribe and Tsujimori (2023)は、典型的な海洋地殻構成岩がどのような条件でローソン石エクロジャイトに再結晶するのかを計算し、沈み込み帯の成熟度の変化による海洋地殻中のローソン石の割合の変化とスラブの水の保持能力の変化を予想した。その予想では、沈み込み開始から約5,000万年経過すれば、約130 km(圧力約4 GPa)を超えてもローソン石が安定な変成海洋地殻は完全な脱水分解を免れる。しかしながら、天然のローソン石エクロジャイトからスラブの年齢を正確に決定できた事例はほとんどない。本研究では、フランクフルト大学の最先端の局所放射年代測定法を用いて、ローソン石エクロジャイトのざくろ石のリム部が成長した年代と、ローソン石エクロジャイトに含まれる沈み込み変成作用以前に形成したジルコンの年代を決定することで、スラブの年齢を決定する。

研究期間

2024年度~2024年度

研究組織

氏名所属
辻森 樹東北アジア研究センター
福島 諒理学研究科
マーシャル ホルストフランクフルト大学地球科学研究所