東北大学 東北アジア研究センター

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利根川の流路変更事業と陸産貝類2種間の交雑への影響

研究題目

利根川の流路変更事業と陸産貝類2種間の交雑への影響

研究領域

(D) 自然・文化遺産の保全と継承

研究内容

 遺伝子流動を伴う交雑 (浸透交雑) は親集団には見られない遺伝的組み合わせを生みだし,生物進化において重要な役割を担うことが近年の研究で明らかになってきた。しかし,浸透交雑がすべての生物においてどの程度一般的なのかは明らかではない。その原因は浸透交雑が十分な根拠によって実証された生物が一部の分類群に偏っているからである。したがって,浸透交雑の一般性を明らかにするためにはさまざま生物における浸透交雑の実証が必要である。また,一般的な浸透交雑の開始要因も明らかではなく,それに関してもさまざまな生物において解明・検討する必要がある。
 陸産貝類は、移動分散能力が非常に低いため地域間での分化が生じやすく、高い地域固有性を見せる生物の一つである。ミスジマイマイ種群にはミスジマイマイとヒタチマイマイの2種が含まれ,前者は南関東のみに、後者は北関東以北に分布する。先行研究によってこの2種間における交雑が示唆されていたが,その実証は不十分であった。さらに,その種間交雑が一度のみならず三度にわたり起きたことが示唆されており,他にこのように交雑が繰り返し起きた可能性がある例はまれである。
 申請者は、これらの交雑イベントの一部では人為的な利根川の流路変更が関与した可能性が高いと考えている。つまり,山が多く細長い日本の形状故に分断され数多の種類に分化した日本の陸産貝類が、大きく広がる関東平野に多くの人間が暮らし始めたが故に行われた利根川の流路変更により進化のトリガーが引かれる結果に至ったという仮説である。本研究ではミスジマイマイ種群における浸透交雑のパターンを理解することでこの仮説の検証を行う。ミスジマイマイ種群の分布域を網羅するサンプリングを行うとともに高解像度の遺伝子解析を用いて浸透交雑を実証し,どのように浸透交雑が開始したのかを検討する。

研究期間

2023年度~2023年度

研究組織

氏名所属
木村 一貴東北アジア研究センター
石井 康人理学部
清水 啓介早稲田大学総合科学学術院

共同研究報告書

2023年度