研究題目
在日外国人の社会統合と地理的要因との関連
研究内容
移民の居住環境がその社会統合に影響を与えるとされてきた。移民の受け入れに長い歴
史のある欧米諸国や国内移動が多い中国において、移民の社会統合と地理的要因との関連
性について多くの議論が蓄積されてきた。近隣(地区)レベルでは、移民の居住地の社会
環境(地域住民の民族的・社会経済的構造、近隣住民とのつながり)、経済環境(たとえば、
雇用機会)、公共サービス(教育機会や医療施設など)、文化的環境などは、その統合に大
きな影響を及ぼす可能性がある。たとえば、エスニック・エンクレーブに居住することで、
ホスト国の住民との接触機会が減り、その社会的・経済的な孤立を強化させ、統合を阻害
してしまうかもしれない(アイソレーション論)。また、都市レベルでは、現在を含めた生
活拠点としたことのある都市の経済状況、産業構造、政治的・社会的環境なども移民の社
会統合に関連するとされている。しかし、日本の移民政策や外国人の地理的分布は欧米な
どと大きく異なるため、これまで得られた知見が日本にも適用されるとは限らない。
日本では、80 年代から外国人の受け入れが拡大してきており、外国籍人口の急増に伴い、
社会学や地理学など多くの分野における移民研究への関心が高まってきた。このなかで、
社会学の観点からの在日外国人の社会統合の規定要因の究明、および、地理学の観点から
の在日外国人の居住や空間的分布特徴の解明がそれぞれの分野で進んできた。しかし、在
日外国人の社会統合と地理的要因との関連性に関する議論はまだ少ない。
そこで、本共同研究は、国内外の既存研究の結果を踏まえ、日本のコンテキストを考慮
しつつ、社会学・地理学・地域政策の複眼的視点から、在日外国人に対するアンケート調
査を通じて、その社会統合と複数の空間スケールにおける地理的要因との関連性を探索す
ることを目的とする。これにより、日本での外国人の社会統合における地理的要因が明ら
かにされ、日本における移民研究やエスニック地理学に貢献できるだけでなく、エビデン
スに基づく多文化共生社会の実現に向けた地域政策の参考になると期待される。
研究期間
2022年度~2023年度
研究組織
氏名 | 所属 |
---|---|
滕 媛媛 | 東北アジア研究センター |
中谷 友樹 | 東北大学環境学研究科 |
埴淵 知哉 | 東北大学環境学研究科 |