東北大学 東北アジア研究センター

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「東北アジア研究センター特別講演会/第22回支倉セミナー」についての報告記事

 2024/9/25に東北アジア研究センター客員教授のベル・コトレルマン氏による講演「予期せぬ隣人―イデッシュ文学からみえてくる日本人」(英語)が行われた。20世紀初頭にソ連は対日本との緩衝地帯と言うことも含めて、アムール川中流域にユダヤ人自治州を建設したが、そこでの刊行されたイデッシュ語の文献あるいはそこで暮らした人々が残した記録からみえてくる20世紀前半のロシア極東・帝国日本を含む東北アジアの歴史に関する報告だった。ユダヤ自治州に入植した人々は、満州国の日本人、あるいは戦後のシベリア抑留の日本人との接触があり、それを様々な形で記録に残しているのである。コメンテーターの赤尾光春氏(国立民族学博物館)は、ユダヤ研究の専門家として、コトレルマン氏の発表の背後にある歴史や満州における帝国日本のユダヤ人との関係にも触れるものであった。彼等のやりとりを通して、20世紀前半の東北アジアの民族関係史には、この土地に歴史的に暮らしてきた土着の諸民族と、ユダヤ人さらにスターリン時代の朝鮮韓国系の人々の強制移住を含めた動態的な側面に注目する必要性が示唆された。参加者はオンラインも含めて18名ほどであったが、刺激的で濃密な時間となった。(高倉浩樹)

 

熱心に討議する赤尾氏とコトレルマン氏