東北大学 東北アジア研究センター

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地域文化の評価にもとづく漁業復興政策を国際発信:宮城県南部の小規模沿岸漁業に関する人類学的研究

【発表のポイント】

・漁業復興においては、協力か競争か、共同か個人主義かの二者択一ではなく、双方のバランスが必要であること、そのバランスは地域生態系と文化・歴史の相互作用で定まるが、漁業者自身の選択も重要であることを人類学的に解明しました。

・小規模沿岸漁業の復興にあっては、新自由主義的な復興支援策ではなく、地域生態系と文化に基づく漁業の復興政策が当事者の自立的な復興に寄与することを示しました。

 

【概要】

 地域共同体の災害復興において重要とされる「協働」は、現代社会にあっては「災害ユートピア」といった形で出現するものの、一過性のものであるがゆえに、「社会関係資本」(絆)への政策的支援が必要だとされてきました。また漁業復興にあっては企業型の漁業産業育成が鍵とされてきました。
 宮城県南部特に山元町の小規模沿岸漁業に関する人類学的な調査研究を通して、復興における「協働」が、他律的なものではなく、地域生態系と歴史に根ざした漁業文化が鍵となっていることを解明しました。具体的には、漁業資源の生物学的性質や資源量の多寡に応答した競争的漁業と平等主義的漁業が地域の歴史的伝統のなかで形成されてきたこと、この二つの漁業のやり方が地域社会のなかで漁業者個人に選択可能となっていることです。そしてこの選択可能性が、漁業者自身による自立的な復興に寄与していました。
 これらを踏まえ、小規模沿岸漁業の復興にあっては、地域生態系の生物多様性と技術文化の多様性を保持・発展させる政策が重要であることを提案しました。
 本研究成果は、2021年3月26日に国際誌「Disaster Prevention and Management」30巻6号にオンラインで掲載されました(著者:高倉浩樹教授)

 https://doi.org/10.1108/dpm-10-2020-0312