

震災後における慰霊碑、遺構、遺産に関する国際比較研究

2017年6月の文部科学大臣からの「指定大学院」指定を受け、学際的な災害研究を推進するため設置された「災害科学世界トップレベル災害研究拠点」には「災害人文学ユニット」が設けられ、人文学の立場から多様な災害研究を展開している。その中の「災害と健康」班では、慰霊碑、遺構、遺産など災害から「残されたもの」の意義や活用に注目し、調査研究を進めている。本研究のメンバーは当班に所属している。木村とボレーは2018年から日本、インドネシアなどで事例研究を積み重ね、2019年の2月にはフランス、インドネシア、香港、日本から研究者を招聘して国際ワークショップを開催した。
今年度は従来の研究を継続すると共に、新たに2015年に大震災を経験したネパールの専門家を加え、研究の深化を図る。特に首都カトマンズで最も多くの死傷者を出したDharahara (BhimsenTower) と呼ばれる街を象徴的する塔の崩壊は、大震災を経験した多くのネパール人たちに復興への不安を想起させた。その後Dharaharaの塔の再建は復興のシンボルとして語られるようになった。2018年12月、ネパール政府は、約34億円を投資し、中国の企業と共同で当該エリアの整備に着手した。そこでは崩壊した塔をそのままの状態で保存することや、震災記念館(博物館)の設立が予定されている。地震の多いネパールにおいて、被災したモノの保存や記念碑の設置という動きは、1934年ネパール・ビハール地震、1988年サガルマータ地震の際にはみられず、新しい動向として確認される。工藤は、崩壊したDharaharaの保存をめぐる動向と、1988年の震災被害者の石碑を相対的に調査し、大規模災害に対する人々の「残す」行為の検討から、当該社会の人々の復興について検討する。さらに国際シンポジウムを開催し、従来の研究成果と合わせて議論を深める。来年度はインドネシア、ネパール、日本などで追加調査を行い、その成果とシンポジウムの発表論文をもとにして論文集の編集、出版をおこなう。

2019年度~2020年度

氏名 | 所属 |
木村 敏明 | 東北大学文学研究科/東北アジア研究センター兼務教員 |
高倉 浩樹 | 東北アジア研究センター |
セバスチャン・ペンマレン・ボレー | 東北大学災害科学国際研究科 |
工藤 さくら | 災害人文学領域 |
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