本講座について
高校生を対象とした
ロシアを文学・歴史・民族・社会・自然の観点から
理解するオンライン連続講義
本講座は、高校生を主な対象として、日本の隣国であるロシアについて、文学・歴史・民族・社会・自然の観点から理解することを目的としている。ロシアがウクライナに対して始めた軍事侵攻(以下では、「ウクライナ戦争」)は地域の平和と国際秩序を破壊する行為であり、断じて許されるものではない。
その一方で、昨今のロシアをめぐるマスメディアの報道は、プーチン大統領の政治動向と軍事的解説が多くを占めている。それらは重要な情報であるが、このような事態であるがゆえにこそ、日本の隣国としてのロシアを理解することが求められている。
いかなる歴史をもち、どのような国なのか、そしてどのように社会が営まれているのか、日本との関係はどのように営まれてきたのか等を、学術的観点から理解することは現在のロシア政府を批判するためにも重要なことである。
講師は、文学・歴史学・文化人類学・政治学に関わる研究者であり、長年にわたってロシアを様々な方法で研究してきた専門家である。本講座の特徴は、ロシア人を中心とするロシア社会・文化だけでなく、多民族国家という観点、東アジアからの観点を用いてロシア社会・文化の解説を試みる点にある。その豊富な知識と深い理解を伝えることで、日本とロシアの関係をどう考えるべきか受講者とともに議論する機会を設けたい。
○ 下記開講日の16時30分~17時15分に実施(一回の講義内容は30分/講師自己紹介5分、質疑応答10分)
○ 方法/Zoom(予定)*質疑応答以外の講義は録画いたします
スケジュール
講座紹介
10/16(月)
人類史からみえるロシア
シベリア先住民をめぐる人類史と狩猟牧畜を中心とする文化や宗教について扱う。どのようにアフリカ起源の人類が極寒地のシベリアで暮らすようになったのか、そもそもどのような民族が暮らしているのかについて解説する。
とりわけ極寒の環境のなかに適応する歴史のなかで編み出されたトナカイ遊牧について紹介する。動物性資源に依存した生存戦略の特徴とシャーマニズムやアニミズム的世界観について具体的事例を踏まえながら述べたい。
さらにシベリアは前近代の日本列島と深い関係をもっていることについても言及したい。
高倉 浩樹(たかくらひろき)
東北大学東北アジア研究センター教授、福島県出身/福島県立磐城高等学校
1992年上智大学文学部卒業、1998年東京都立大学大学院博士課程単位取退学。1999年に博士(社会人類学)号取得。1998年より東京都立大学人文学部助手を経て、2000年から東北大学東北アジア研究センター助教授/准教授を経て、2013年より現職。
日本史の蝦夷に対する関心からシベリア先住民族の歴史文化に関心をもち、1995~1996年の一年半にわたってトナカイ遊牧民のキャンプで住み込み型調査を行い、その後もシベリア各地で現地調査を行っている。家畜化の起源や人類の寒冷地適応のほか、先住民運動やナショナリズム、気候変動のもたらす北極社会の学際的研究を行っている。
11/6(月)
歴史からみえるロシア
ロシアは中国や韓国(朝鮮)同様、日本が国境を接する国の一つだが、ロシア帝国の東方拡大によって日露の交流が始まったため、約300年の交流史を持つに過ぎず、正式に国交を結んだのは他の欧米諸国と同じ約170年前のことである。
江戸時代の日露両国民の接触まで遡り、国交樹立後の現在に至る日露両国の相互関係について、日露戦争、ロシア革命とシベリア出兵、シベリア抑留、北方領土問題等隣国ゆえの紛争や対立も含め、大きな流れをつかみたい。
寺山 恭輔(てらやまきょうすけ)
東北大学東北アジア研究センター教授、長崎県出身/大分県立大分舞鶴高等学校
1987年京都大学文学部卒業、1993年京都大学大学院博士課程研究認定退学。1996年に博士(文学)号取得。1995年より九州大学大学院比較文化研究科助手、1996年に東北大学東北アジア研究センター助教授・准教授を経て、2013年より現職。
大学在学中にゴルバチョフが始めたペレストロイカに関心をもち、ソ連の歴史研究を始め、1992年から2年半ロシア連邦サンクトペテルブルク大学(プーチンの母校)に研究員として留学する。スターリン時代のソ連史、とくに極東・シベリア地域や周辺地域(満洲、モンゴル、新疆)に対する政策や日本との関係に関してロシアの公文書館で収集した一次史料を研究成果に活用している。
11/28(火)
絵本からみえるロシア
ソ連崩壊と共にロシアの絵本文化は一時低迷したが、現在では新たな世代の作家が育ってきている。本講義ではロシアの絵本の歴史を概観しつつ、現在、活躍している絵本作家たちや、多民族国家ならでは民族色あふれる絵本を紹介する。
藤原 潤子(ふじわら じゅんこ)
神戸市外国語大学准教授、「かけはし出版」代表、兵庫県出身/兵庫県立兵庫高等学校
日本学術振興会特別研究員、総合地球環境学研究所上級研究員などを経て、2015年より神戸外大に勤務。学術博士(大阪外国語大学)。
2002年に初めてロシアでフィールド調査を行った時、「かつては呪術など信じなかったのに信じ始めた」と語る人々に出会って衝撃を受け、現代ロシアの呪術リバイバル現象を研究するようになった。これと並行して、ロシアの絵本の翻訳も行っている。ロシアの文化や社会について、より積極的に紹介するために、2023年に翻訳絵本の出版社「かけはし出版」を設立。今は宝探しをするような気分で、日々、名作を探している。
12/14(木)
宗教からみえるロシア
多宗教・多民族のロシアでイスラームを信仰する人びとについて焦点を当てる。ロシアが多民族国家であるという事実は、ロシアによるウクライナ戦争以降のマスメディアでの解説で、知られてきているかもしれない。そのロシアは実は、歴史をさかのぼれば、ロシア正教だけでなく、さまざまな宗教・宗派を公認する帝国であり、そこでキリスト教の次に信者の多い宗教は、イスラームだった。この講義では、ロシアでイスラームを信仰する人びとの歴史と現在を紹介したい。
磯貝 真澄(いそがいますみ)
千葉大学大学院人文科学研究院・文学部准教授、鳥取県出身/鳥取県立米子東高等学校
1999年神戸大学文学部卒業。2010年神戸大学大学院文化学研究科修了、博士(学術)。2019年より東北大学東北アジア研究センター助教を経て、2022年より現職。
中東近代史、オスマン帝国への関心から、ロシア帝国・ソヴィエト連邦のムスリム社会とイスラーム信仰の複雑なおもしろさにはまる。2003年より2年間、ロシア連邦カザン国立大学(現カザン連邦大学)に留学。ロシア帝国におけるイスラーム法の運用やイスラーム教育、イスラーム改革論や近代化論、またソ連初期のムスリム知識人の活動などを研究している。
1/17(水)
メディアからみえるロシア
ロシアには言論の自由がないとしばしば言われている。しかし他方で、18世紀から現在に至るまで、ロシアでは多数の新聞や雑誌が発行され、いくつものテレビ局が番組を放映している。国家に抑圧されつつ、固有のカルチャーを生み出してきたロシア・メディアの特質を、帝政期からプーチン時代までの歴史をたどりながら考える。
巽 由樹子(たつみゆきこ)
巽 由樹子 東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授、神奈川県出身/私立湘南学園高等学校
2001年東京大学文学部卒業、2009年東京大学大学院博士課程単位取退学。2012年に博士(文学)号取得。2009年より日本学術振興会特別研究員(PD)、2012年より東北大学東北アジア研究センター教育研究支援者、2013年より東京外国語大学大学院総合国際学研究院講師を経て、2019年より現職。
高校時代、ドストエフスキーが暗すぎてどうしても読み通せなかったことから、刊行当時はどういう時代で、ロシア人は本当に読めたのかと素朴な関心を持ち、大学院で近代ロシアの出版・読書史の研究を始める。偽ツァーリ出現から社会主義イデオロギー、スターリン崇拝、ペレストロイカからウクライナ侵攻まで、ロシアで極端な思想と行動が広がる理由を考えるため、帝政期から現代までのメディア史研究に取り組んでいる。
2/1(木)
アニメからみえるロシア
ソ連アニメに描かれた「子ども時代」のイメージと日本のアニメの影響を扱う。ソ連アニメは独特の映像表現で独自の子供向け文化を創造した。その映像表現は、ロシア文化から切り離すことのできない一部となり、今現在も、幼少期の思い出の中で重要な役割を担っている。講義は、1950~1980年代ソ連アニメの世界について。周囲で起きていることとその矛盾について、また、子供の世界と大人の世界の関係性について、子供たちはアニメを通していかに学ぶのか。講義では他に、日ソ共同制作アニメについて、またアニメの伝統における日ソの影響の相互関係についても触れる。
パホモフ オレグ
東北大学東北アジア研究センター助授、ロシア・ウラジオストク出身 / ドナイ市立高等学校
2003年に(ロシア連邦)極東国立大学国際関係学部卒業、2018年に博士(共生文明学)号取得(京都大学大学院・人間環境学研究科)。2012年よりロシア沿海地方行政府・国際協力局の儀典官、2016年から極東連邦大学・歴史学部長、2017年からカザン連邦大学・学長補佐、2018年から中国山東聊城大学・北極圏研究センター准教授を歴任。2022年より現職。
研究対象は東北アジアとロシア政治文化、ロシアと東北アジアの関係史である。
お申込み
フォームよりお申込みください
https://forms.gle/uG9ck3XoUNLXbRje9
- このオンライン連続講座は、高校単位で申し込みを受付ており、高校生個人が申し込むことはできません。高校を代表して担当の先生が応募し、学校内の教室を確保し、オンライン配信の設備を準備してください。
- 講義は10月16日に開始し、2月1日まで6回行われますが、学校の都合により一部の受講でも構いません。少人数の受講も歓迎します。
- 受講申し込みは、上記URLにて、2023年8月7日から9月25日まで受付。事務局より10月初旬にオンラインURLを送ります。