センターについて
本研究センターは、国立大学法人東北大学東北アジア研究センター規程第二条で「学内共同教育研究施設等として、東北アジア(東アジア及び北アジア並びに日本をいう)地域に関する地域研究を学際的及び総合的に行う」ことを目的として掲げている。その前身は1962年に設置された文学部附属日本文化研究施設であるが、1996年に日本・朝鮮半島・中国・モンゴル・ロシアを総合的に捉える地域研究を設置目的とした全国唯一の研究型組織(部局)として、また人文社会科学と自然科学による学際研究施設として発足した。東北(北東)アジア研究の大学設置研究所型組織としては日本で最大である。
センター長挨拶

東北アジア研究センターは 2021 年に設 立 25 周年を迎えようとしています。東北大学の比較的新しい研究所型組織として、文系と理系の研究者が問題意識を共有しながら独自の地域研究を行ってきました。設立目的は、日本に隣接する北方のアジア世界つまり中国・朝鮮半島・モンゴル・ ロシアを総合的に理解することにあります。その前身は1962年に設置された文学部附属日本文化研究施設にまで遡ります。
日本にある多くの地域研究機関は、いわゆる外国の広域世界を主要な研究対象にしています。また日本における日本研究は、アジアやヨーロッパと切り分けられた形で日本を理解しようとします。これに対し、本センターは日本を含めた形で地域研究を行う点に特徴があります。要するに、東北アジア地域のダイナミズムのなかで日本を捉え、また日本のダイナミズムから東北アジア地域を考えるということであります。
人文学や社会科学同士、あるいは自然科学同士であっても学際研究はなかなか難しいのが現状です。様々な試行錯誤を繰り返す中で、我々が挑戦可能な学際的なアプローチの領域が見えてきています。例えば20 世紀大国比較史、越境環境汚染と移民といった人文社会科学的課題から、北極圏の気候変動とアジア世界、人類の寒冷環境適応と生物地質史といった文理融合的課題です。特に人類史を視野に入れた地域研究は、これまでの我が国では試みがなく、新しい展望を開くことになるのではないかと考えております。また東日本大震災を経験した大学として、災害対応の応用実践的な地域研究にも力を入れています。
私たちのセンターは2020年から外国人研究員の公募を開始しました。東北アジアを研究する諸外国の研究者が仙台に暮らし、じっくりと腰をすえて国際共同研究を行う体制を幅広く構築するためです。公募の成否は、我々の組織が海外の研究者からどのように評価されているかに掛かってきます。我々の研究が面白しければ必然的に新しい人々が近寄ってくるからです。その結果として、センターの国際拠点機能が強化されることを期待しています。
日本社会そして国際社会が必要とするアジア理解を、北方視座のアジア地域研究から提供する東北アジア研究センターが、より大きな役割を果たすべく、研究の深化と成果の世界的発信につとめてまいりたいと思います。
2021年4月 センター長 千葉 聡
理念と目的
本センターは、東北アジアという地域理解の枠組みを確立し、普及させることを第一の目的としています。東北アジア研究センターが設立された1996年以後の20年間は、まさに東北アジアが地域枠組みとして実質化していった時代だったと言えます。中国の経済発展と日本・韓国などの結びつき、ロシア、モンゴルのアジア太平洋国家としての再定義と東アジアとの関係構築、そして中国とロシアを中心とする関係調整機構の出現など、今やロシアのシベリア・極東、中国、朝鮮半島、モンゴル及び日本から成る東北アジアは、冷戦時代とは比較にならないほど密接な関係をもっています。北アジア、東アジアといった既存の地域概念では、現今の情況を捉えることができなくなっているのです。しかしわが国では、未だに日中・日露・日韓などといった二国間関係の枠組みでの理解を克服できておらず、日本が東北アジアの一部としてあることも充分に認識されているとは言えないのが実情です。東北アジア地域概念の確立は、わが国にとって急務であると言えましょう。
地域研究に求められるのは、実践性です。経済発展の中で、東北アジアは今急激な変化を経験しています。変化への戸惑いは、ときに深刻な亀裂を社会に走らせます。開発に伴う環境問題、民族の対立、歴史認識、領土問題などなど、亀裂の露頭はじつに様々な形で現れます。そのような課題を、広域的枠組みにおいて共有することが重要です。一方で東北アジア地域内では、すでに多くのものが共有されています。地域の文化的な価値をどのように評価し、何を残し、何を変えなければならないのか。正負の遺産にどのように向き合うのか。それが東北アジア地域研究に求められている課題です。特に重要なのは、研究者と地域住民の協働です。地域研究とは、学者が一方的に分析結果を提示するのではなく、地域住民が継承・創出しようとする文化のあり方をともに考えていくことです。
地域研究への要請は、けっして地域住民の社会・文化の領域にとどまりません。地域の山河も、そこに住む人々が生を営む、人間的な意味づけを与えられた「環境」としてあります。ですから「自然環境」の研究も、地域研究の対象にほかなりません。地域研究において学際性が要求されるのは、学問が細分化されているからではなく、地域「環境」の多様性とそれに与えられた意味の包括性に起因するのです。
それゆえ東北アジア研究センターは、文系・理系のさまざまな研究分野の連携によって、地域を見つめる多様な視座を確保することをめざします。我々は、高度に専門化し、分厚い蓄積をもつ諸学の成果を有しています。地域研究の学際性とは、専門研究の到達点を安易に否定することではなく、その蓄積を地域理解のために動員し、活用することです。文系・理系の研究者の連携を確保し、諸学がそれぞれの分野で東北アジアを考えることで、地域のより多様な課題を視野に収めることが可能となります。
また地域研究者にとって、地域の研究者達の研究成果と向き合いことなくして、研究は成り立ちません。我々が彼等を研究するように、彼等も我々を研究しています。我々には、東北アジアの研究者コミュニティーの一員として、そのような双方向性をもった東北アジア地域研究を進めていくことが求められています。
沿革
2020年6月 | 文科省補助事業・北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)に参画機関として参加(~2025年3月) |
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2019年12月 | 東北大学新領域創成のための挑戦研究デュオに「1万年間続く持続可能社会構築のための文化形成メカニズムの解明」(代表:佐野勝宏教授。2019-2024年)に採択 |
2018年6月~2019年2月 | 東北大学知のフォーラム事業「Geologic Stabilization and Human Adaptations in Northeast Asia」 |
2018年3月 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構・歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業・東北大学拠点運営委員会の参加 |
2017年10月 | 指定国立大学東北大学災害科学世界トップレベル研究拠点事業に参画(2021年3月迄) |
2017年4月 | 上廣歴史資料学研究部門第二期設置(2022年3月迄) |
2016年4月 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構・北東アジア地域研究推進事業に参加し、東北大学拠点を設置(~2022年3月) |
2016年4月 | 文科省補助事業・北極域研究推進プロジェクトに参画機関として参加(~2020年3月) |
2015年12月 | センター設置20周年記念式典・国際シンポジウム開催 |
2012年4月 | 上廣歴史資料学研究部門(上廣倫理財団による寄附)設置 2012年4月に東北大学防災科学研究拠点を解散し、東北大学災害科学国際研究所が創設 |
2010年9月 | 東北アジア研究センターシベリア連絡事務所を、東北大学ロシア代表事務所シベリア支部に統合 |
2009年11月 | 大学広報課及び文系所部局との協力の下での市民向け学術交流懇談会・リベラルアーツサロン運営開始 |
2009年4月 | 公募型共同研究設置 |
2009年4月 | コラボレーション・オフィス開設 |
2008年4月 | 文科省科研費・特別推進研究「清朝宮廷演劇文化の研究」(2008~2012年度、磯部彰教授) |
2007年10月 | センター内に東北大学防災科学研究拠点事務局を設置(平川新教授代表) |
2007年 | 新運営体制構築 基礎研究部門(教員が属する以下の分野:ロシア・シベリア研究分野、モンゴル・中央アジア研究分野、中国研究分野、日本・朝鮮半島研究分野、地域生態系研究分野、地球化学研究分野、地域計画科学研究分野、環境情報科学研究分野、資源環境科学研究分野)、プロジェクト研究部門(教員が兼務しする形で組織化する時限付き・学際的・大型プロジェクト)、研究支援部門(学術交流分野、情報拠点分野) |
2006年 | センター設置10周年設置記念式典 |
2004年 | 国立大学法人化 |
2002年4月 | 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業「地雷探知用ウエアラブル・SAR-GPRの開発」(2002~2006年度) |
2002年4月 | 文科省科研費・特定領域研究「火山爆発にともなう地表現象に対する新研究手法の開発と適用」(2002~2006年度、谷口宏充教授) |
2001年 | センター設置5周年設置記念式典 |
2000年4月 | 文科省科研費・特定領域研究「東アジア出版文化の研究」(2000~2005年度、磯部彰教授代表) |
1998年5月 | 東北アジア研究センターシベリア連絡事務所をロシア連邦ノボシビルスク州アカデムゴロドク市に開設 |
1996年5月 | 東北アジア研究センター発足 3基幹研究部門(地域交流、地域形成、地域環境)、2客員研究部門(文化・社会経済政策、資源・環境評価) |
1996年5月 | 文学部附属日本文化研究施設廃止(前史) |
1962年4月 | 文学部附属日本文化研究施設設置(前史) |
歴代センター長
第9代 | 千葉 聡 | 2021.4.1 - 現在に至る |
第8代 | 高倉 浩樹 | 2017.4.1 - 2021.3.31 |
第7代 | 岡 洋樹 | 2013.4.1 - 2017.3.31 |
第6代 | 佐藤 源之 | 2009.4.1 - 2013.3.31 |
第5代 | 瀬川 昌久 | 2007.4.1 - 2009.3.31 |
第4代 | 平川 新 | 2005.4.1 - 2007.3.31 |
第3代 | 山田 勝芳 | 2001.4.1 - 2005.3.31 |
第2代 | 徳田 昌則 | 1999.8.1 - 2001.3.31 |
初代 | 吉田 忠 | 1996.5.11 - 1999.7.31 |
名誉教授一覧
工藤 純一 | 令和3年 | |
栗林 均 | 平成29年 | |
磯部 彰 | 平成28年 | |
平川 新 | 平成26年 | (退職時の所属部局:災害科学国際研究所) |
菊地 永祐 | 平成21年 | |
谷口 宏充 | 平成20年 | |
山田 勝芳 | 平成20年 | |
入間田 宣夫 | 平成17年 | |
吉田 忠 | 平成16年 | |
宮本 和明 | 平成16年 | |
徳田 昌則 | 平成13年 | |
佐藤 武義 | 平成9年 |